印刷向けの規格「PDF/X」の解説

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印刷向けの規格「PDF/X」の解説
目次
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概要

このページでは印刷用途向けのPDF規格である「PDF/X」について解説しています。

PDF/Xの中でも、PDF/X-1a・PDF/X-4に限った情報を解説します。

PDF/Xとは?

PDF/Xとは、Portable Document Format eXchangeの略で、PDFファイルの相互交換性に関する規格のことです。

相互交換とはデータの受け渡しと考えてください。

PDF/Xの仕様は、Adobeが決めているのではなく、国際標準規格であるISO 15930により規定されています。

つまり、PDF/XPDFデータを受け渡す際にどのようなデータが望ましいかという世界標準の基準を示しているともいえます。

なお、拡張子は「.pdf」で通常のPDF形式のファイルと同じです。拡張子で判別はできません。PDFファイルがPDF/Xに準拠しているのかのチェック方法は後述します。

PDF/Xは新しいPDFではない

PDF/XPDFの新しいバージョンではなく、あくまでPDFの規格全体の一部分(サブセット)で、印刷用途に最適化されたPDFの規格です。印刷上問題となるカラー・フォント・トラッピング・ハーフトーンなどの不確定要素をできるだけ排除した内容になっています。

概念図
概念図

また、上の図からもわかりますが作成したPDFPDF/Xにすべて準拠するわけではありませんし、印刷用途向けのPDFPDF/Xにすべて準拠するわけではありません。PDF/Xに準拠していなくても印刷に適したPDFも存在します。

PDF/X印刷用途向けのPDF

PDF/Xという規格がなかった時には、PDFといっても印刷物をスキャンしただけのPDF、ウェブ用のPDF印刷用のPDFなど、さまざまな種類がひとまとめに「PDF」という名前で呼ばれていました。

印刷用途向けのPDFの標準的な規格がなかったために「PDFにさえなっていれば印刷は問題ない」という誤った認識を持たれる方もいらっしゃいます。

PDF/Xはこのような言葉上の問題を解決するとともに、PDFに変換する作業者自身が印刷用途のPDFに準拠しているかどうかを判断できるように判断材料を明確化したものです。

PDF/Xにはいくつかの種類があり、主なものとして「PDF/X-1a」「PDF/X-3」「PDF/X-4」が挙げられます。

PDF/Xに変換することのメリットは?

PDF/Xにすることでどのようなメリットが発生するのでしょうか?

PDF/Xプリフライト(出力前のデータチェック)の機能を持っているともいえます。データチェック機能により次のメリットが発生します。

  • カラースペースがある程度限定されているので、意図しないカラーになる可能性が低い(特にPDF/X-1aはRGB禁止)
  • フォントがすべて埋め込まれた状態(またはアウトライン化された状態)であるので、プリンタフォントがないなどの問題による文字化けの可能性がない
  • すべての実画像(印刷に使う画像)が埋め込まれて、OPI情報(画像差し替えの情報)が含まれないため、リンクミスなどによる異なる画像への置き換えエラーの心配がなくなる
  • 仕上がりのサイズや断裁の位置が明示されているので、データ上にトンボがなくてもデータ処理上はサイズのミスがなくなる

PDF/Xと仕上がりの問題は別

画像の解像度

PDF/X印刷工程を重視したものですが、PDF/Xは画像の解像度に関しての制限はありません。このため、解像度が72dpiやそれ以下の解像度であっても「PDF/Xとしては」問題はありません。

ただし、変換設定の誤りで、解像度が意図せずに低下していた場合に印刷物としては問題となることがあります。

※アプリケーションのマニュアルなどで使われる操作画面のスクリーンショットのほとんどが72dpiですので、一概に解像度が低いことが印刷物として不適切であるとは言えません。

カラーモード

PDF/X-1aではカラーモードがCMYK+特色と規定されているので、結果として特色版を含むことを許容しています。

もしCMYKのみのプロセスカラー印刷であれば、特色を含むPDFはデータとして不適切になりますが「PDF/X-1aとしては」問題はありません。

裁ち落とし

裁ち落としの部分まで画像や色が入っていないなどの問題はPDF/Xに変換する前の問題で、PDF/Xとは別の問題になります。

このように、PDF/X準拠であったとしても製版工程や印刷工程では注意すべき点があります。

PDF変換前に仕上がりの確認をしていないと、PDFに変換しても結果としてエラーの印刷物が仕上がってしまいますので注意してください。

データをPDF/Xへ変換するための手順について

データのPDF/X-1a・PDF/X-4への変換手順はアプリケーション・バージョン別に掲載しています。

PDF/X-1aやPDF/X-4に準拠しているかをチェックする方法

PDFPDF/X-1aやPDF/X-4に準拠しているかをチェックするためには、Adobe Acrobat Proのプリフライトの機能を使用します。

※画面はAdobe Acrobat Pro バージョン2025.001.20432です。

チェックしたいPDFをAdobe Acrobat Proで開き、プリフライトのパネルを開いたら、プリフライトライブラリの「プリプレス、カラーおよび透明度」を選択します。

※Adobe Acrobat DC以降のバージョンでは、プリフライトライブラリの「必須」の中にPDF/Xへの準拠をチェックするプリフライトは含まれていないので、切り替える必要があります。

プリフライトライブラリを切り替える
プリフライトライブラリを切り替える

PDF/X」の項目にある「PDF/X-1aへの準拠を確認」または「PDF/X-4への準拠を確認」選択して「解析」ボタンをクリックしてチェックします。

「PDF/X-4への準拠を確認」選択して「解析」ボタンをクリック
PDF/X-4への準拠を確認」選択して「解析」ボタンをクリック

PDF/Xに準拠していれば緑のチェックマークが表示されます。

PDF/X-4に準拠している結果
PDF/X-4に準拠している結果

PDF/Xに準拠していない場合は、赤の×が表示され、どこに問題があるのかが表示されます。

PDF/X-4に準拠していない結果
PDF/X-4に準拠していない結果

PDF/X-1aやPDF/X-4の解説ページ

印刷データとしてよく使われるPDF/X-1aやPDF/X-4の解説ページは以下のページにまとめています。