吉田 校了になったデータというよりも、完全データ入稿が基本ですので、データが悪ければお客様にお返しする。あるいは当社で直しの依頼があればお直しします。
通常の仕事ですと校正の納期と品物を仕上げる納期と2つの納期があって、校正の進捗状況によって最終的な出来上がりの納期が動いてしまうというケー スが圧倒的に多い。当社ではお客様からのデータ支給の仕事がほとんどですので、そういう部分ではきっちりと最後までコントロールできる状況になっていると思います。
本田 はい。私が今お話したように一般的な校正と言ってしまうと、校正紙に出して渡して見てもらうということを指してしまうということですね。
吉田印刷所様のホームページをご覧になった方もいらっしゃるかと思いますが、非常に細かいデータの作り方のマニュアルがあります。それを見てお客様 自身が原稿を作るシステムですので、当然不完全なデータが入ってくることがあります。そういう場合は、営業側が発注者の方にデータ内容に対するアドバイスするという流れを取られている。そのやりとりが、ある意味校正に当たる部分になるわけですね。
最終的には、発注者が完全データを作られて出来上がってくるという流れになります。そういう意味では製版やプリプレスがいらない。自動的にPDFを作って生産側に回す流れを作られているからだと思います。
多能工について、後1つお聞きしたいんですが、全ての方が対応できるかどうかや、技量の問題もあると思うのです。一般的にはオペレーターは違うこと をやりたくない。自分が今までやってきたことをずっと守って続けていきたいというのが本音だと思いますが、御社ではどのようにお考えなんでしょうか。
吉田 当社は私が3代目ですが、祖父がやっている頃は家内工業的な状態でしたので、1人があれも、これも、それも、それこそなんでもこなしていました。規模が小さい内はだいたいそうなりますが、ある程度の規模になってきますと分業体制が出来上がってしまって、これは専門職だから手が出せないという話になります。
果たしてそれが良いことなのか、と考え辿り着いた結論は、私の記憶の奥底にあった物作りの原点である「多能工」でした。
スタッフは複数の仕事が出来る能力を持った方が、仕事そのものにも張り合いが出るし、自身の能力やレベルも複合的な評価を得ることにより適正な評価が受けやすくなります。これは会社にとっても大きな力になると考えています。専門職化してしまいますと、そのスタッフが休んでしまった時には穴が空いてし まう。そんな状態を回避するために、もしもの時はどこからでも応援にいける臨機応変の体制が重要だと思っています。
本田 会社規模が大きかったとしても、そうすべきだと思われますか。
吉田 規模の大小はまったく関係ありません。私はそれが理想だと考えております。本音を言いますと実は、規模はこれ以上大きくしたくないんです。売り上げもそんなにはね。(笑)
本田 そのあたりはまた懇親会の時にでも色々お話をしていただけると思います。(笑)