講演録第4弾「私たちは価値の実をお客様と共に収穫する会社です。」

11.質疑応答

質問者① 私どもメーカーでも、会社の進むべき道として「日本酒の場合、古くからある伝統を未来にどう伝えて行けば良いか」、日々スタッフと議論をぶつけ合いながら話しております。今後新しい方針でやって行こうと思った時に、現在の社内の輪をどうまとめあげていくべきか、そのエネルギーを未来にどう伝えていくべきかといった考えを、これまでのご経験を踏まえお聞かせ願えればと思います。


吉田 経営トップの普段言ってることが実際に具現化し、それを積み重ねて「社長の考えは間違いない」と言わせることだと思います。常識にこだわる必要はありません。

酒造メーカーさんは毎年同じ味に仕上げようと一生懸命努力されています。この努力は勿論認めますが、逆の努力もあっていいように思います。日本酒はその年の米の出来が違っているのに対して、いつもの銘柄の味に仕上げようとする。ワインはそうしたことはなく、樹齢やその年によって味が違ってくると消費者は理解しています。しかし、日本酒の場合、同じ味を出すことが日本酒の歴史と文化なのでしょうね。

ならば、限定で今年の味はこれが一番という商品を開発し、毎年味が変わる日本酒があっても良いのではないかと思います。そんな考えで非常識にチャレンジしてみたらどうでしょう。失敗するかもしれません。私は保証しませんが。(笑)

皆さんそれぞれにチャレンジされていることと思います。しかしチャンスは今の常識を覆すところから入っていかないと中々生まれません。一つや二つ非常識なチャレンジをしてみたらどうですか。会社が傾くようなことでなければ、何か成功事例を作る足掛かりとなるアクションを早急に起こすべきだと思います。そうした積み重ねがあってこそ会社も新しい組織に向かって変わっていけるのだと思います。




質問者② 「厄介なところにビジネスチャンスがある」ということですが、吉田社長にとって今までで一番厄介なことは何だったかお聞かせ願います。


吉田 私が経営を引き継いだ段階で、先代が採用した従業員がたくさんおりました。そういうスタッフとの意思の疎通を図ることだったと思います。

東京から帰ってきたばかりの、右も左も会社の事情さえも良く分からない経営者が、好き勝手なことを言っている、そんな覚めた空気が会社の中にありました。

ご質問くださった方も現在新しいことにチャレンジされていますが、会社をまとめあげるには、目の前のチャレンジを一つずつ成功に導いて「なるほど、うちの若い経営者の言ってることにも一理ある」と思わせる成功事例を積み上げていくことだと思います。失敗は成功の母ですから、チャンスは失敗がないと生まれません。失敗を恐れずに成功を勝ち取っていく姿を、従業員に見せていくことがとても重要だと思っています。