講演録第5弾「今 印刷会社がすべきこと」

2.印刷の可能性を潜在需要に探る-1

吉田 会社案内にも掲載されておりますが、昨年の夏に厚さ0.03三ミリメートルの極薄紙の両面にミラー印刷(反転印刷)したものを窓に貼り、遮熱効果がどれ程あるかテスト計測したところ、貼る前と1.5度の温度の違いが出ました。このテストで使用した紙は、ハイデルベルグのマシンで、努力をすれば何とか印刷できるという厚さです。サンプルを回覧致しますのでご覧ください。

この紙に印刷するには、これまでの常識的な考え方では印刷は不可能です。見当性を考慮して、より水を絞る印刷を行わねばならないわけですが、プロの目で見られても、これなら十分納得できる範囲だと思いますがいかがでしょうか。

誠に残念なことですが、まだこのような需要がどこにあるのか当社は掴んではおりません。しかし、まだ見えぬ市場に対して、チャレンジした結果について「ここまで出来る」ことを情報として発信したらどうなるでしょうか。「薄紙や透ける紙で印刷してみたい」という問い合わせが来るようになれば、潜在需要がそれこそ透けて見えてくると考えています。

今ある目に見える需要を追いかけた結果は、金額の安い部分にのみ、その求めが集中することはごく当然の話ではありませんか。そうならないために、独自の技術力がモノを言う潜在需要に対して情報発信が出来たなら、きっと新しい市場を開拓できると考えています。薄紙印刷に対する技術とは単に薄紙を印刷するだけではありません。多様なジャンルに応用できる未来を引き寄せる印刷技術だと考えています。


実例をご紹介しましょう。これまで背幅5センチにも及ぶ分厚いカタログを作っていたお客様がいらっしゃいました。このお客様に当社が技術開発した薄紙印刷の提案を致しました。これだけボリュームのあるカタログになりますと、使用される方の評価は、「重い」「見づらい」「検索しにくい」とネガティブなものが返ってきます。薄紙のプロポーザルを行った結果、厚さも減って軽くなり、更に二つに分冊したことで視認性も向上して、必要な情報のみの配本が可能となり無駄もなくなりました。このカタログで使用した紙の厚さは0.04ミリメートルです。本日はこの印刷を、実際に行っているところをお見せすることができますので、確認してみてください。

これまで当社のお客様に対する考えは、印刷物をご発注くださるお客様と私ども受注者の関係だけで捉えていましたが、実は、このカタログを使用する「利用者」という立場のお客様もおられることに気付きました。この利用者の声を印刷紙面に反映する仕組み作りが、印刷の未来を大きく左右すると考えています。