吉田 先程の話にもありましたが、無駄な投資はしない。いいえ、したくても出来ない。資金的に余裕のある会社ではありませんので、ノーマルなマシンでスペック以上の能力を発揮させるには、自社独自の利用技術を高めるしかないと考えたからです。つまりお金を掛けず無駄を出さない弱者の選択ということでしょうか。
この技術力を高めることは、オフセット印刷の原理原則である湿し水を絞ることです。湿し水を絞った状態でも理想とされるクオリティを得ることができるかを突き詰めようとしました。印刷では、刷りやすさを求めて湿し水を多く与えることで、インキが乳化して濃度が下がる。その結果、今度は濃度を上げるためにインキをたくさん出さなければならなくなる。だから乾燥も遅くなり、更に乾かないからブロッキング防止用のパウダーを大量に出す。こうした簡便を求める安易なスタートが、印刷の適正品質を阻害する大きな原因であると気付きました。
また、印刷物としてクオリティが過剰すぎる仕事もたくさんありました。本来そこまでクオリティを必要としていなかったのです。ならば、その過剰を是正し適性品質を理解していただける努力をすることが先決と考え、取り組んできました。現在当社では、色校正に合わせ込むといった仕事は殆どありません。基本はジャパンカラーに準拠した基準値で印刷し、色校正をなくしても、お客様に満足していただける仕組み作りをこれまで行ってきました。これは過剰を抑え、適正を理解していただける仕組みをどうすれば実現できるかという一例です。
このような問題は当社だけの問題ではなく、印刷業界全体が対処せねばならない是正すべき現実だと思っています。