講演録第5弾「今 印刷会社がすべきこと」

7.メンテナンスは他人に任せるな-1

吉田 しかし、このような状況を作るには、導入した当時の状態にマシンを常に保っていることがとても重要です。これから見ていただく工場には14年目を迎えた8色機があります。このマシンが、最新のソフトに入れ替えて新台と遜色ない機能にパワーアップした状態で、現在も活躍しています。今でも通常11,000から12,000回転で稼働しています。皆さんの会社にあるマシンとこの14年目のマシンを比較されてみてはいかがでしょうか。そして今使用されているマシンを本気で整備して、当社が行っている厄介な仕組みにチャレンジしてみることをお勧めします。きっとこれまでにない新しい価値を包含した、進化へ向けた最初の一歩になることと思います。


松石社長 先日ある印刷会社の社長さんと話していたら、「うちはメーカーと契約して、常にメンテナンスもやってるし、1年に1回インキローラーも高い金を出して変えている」と言ってましたが、そういうことではないですよね。


吉田 全く違います。メンテナンスを外部に委託して機械の今を誰がどうやって判断するのでしょうか。オペレーターがマシンの状況を理解せずして、適性品質の印刷物を作れるわけなどあり得ません。機械の今を理解する大切な情報を得るためのメンテナンスを否定することなど考えられません。当社では毎日、1週間、半月、1ヶ月、3ヶ月、半年等定期メンテナンスの事前スケジュールが立っています。しっかりとしたメンテナンスが出来ていないマシンでは薄紙の印刷はできません。

ただ、当社にはハイデルベルグのマシンしかありません。よって他社メーカーのマシンに関しての知見はありませんので申し添えさせていただきます。


松石社長 以前10人位で別途に無理を言って見学会をさせていただいたことがあります。その中で、印刷機の目盛を見て「湿し水を絞っていると言っていたけど、うちと変わりないよ」という声が上がった時に、吉田さんの若いオペレーターさんが、「インキローラーは何年お使いですか」と質問しました。「1年に1回は変えているよ」「うちのインキローラーは3年程使っていますので、やはり湿し水の量は少し多目になります。3年目のローラーと1年のローラーで同じ量なら、それは随分違いますよね」と答えたそうです。吉田印刷所さんのところでは、実際インキローラーは何年位お使いになるのですか。


吉田 今お話にあったように2年半から3年位は使用しています。湿し水も年1回でも良いのですが、せっかく休みがあるので夏と冬の年2回交換しています。このように様々な部分で無駄のない仕組み作りを考え更に進化させています。世界で1番無駄を出さない、作らない印刷会社になるために、まずは社内の無駄を徹底的になくし、更にお客様が使われる印刷物そのものに、無駄が生じない仕組み作りをお客様と共に行う、そんな考えで百年企業を目指して、今全員で無駄を探し潰す経営を行っているところです。