講演録第5弾「今 印刷会社がすべきこと」

11.印刷の将来-1

松石社長 吉田社長の経営方針や思想を聞くと、我々も含め「プロ」という意識を忘れているように感じています。

例えば、乾きを早くするためにUV強制装置を買おう、小ロットが増えてきたからデジタル印刷機を買おう——いつも金銭で問題解決を見つけ出すところに走っているような傾向を感じます。果たしてそれが本当に印刷会社の差別化になっているのだろうか。デジタル印刷機を買っても薄紙印刷はできないし、ごく普通の印刷でも用紙の制約があったりして特徴が何も見えてこない。同じハイデルベルグの機械を入れて、しっかりとメンテナンスをして技術を高めさえすれば、独自のモノが出来るにも関わらず、無駄となる資金を使って刷りやすいものを追いかける、常に安易な方向に走っているような気がしてなりません。

吉田 全くその通りだと思います。これからは印刷のプロとして、利益を生む印刷物をお客様に提供する意義とその必要性に対し不断の決意を持って経営に当たらねばならないと思っています。

会計処理の項目で考えますと、お客様は印刷物を削減の対象となる経費と捉えておられる場合が多くあります。しかし当社では、利益を生む印刷物の調達は、経費ではなく「投資」と考えるべきだと説明をしています。なくなったから作る消耗品的経費の発想から、利益を生む目的で調達する印刷物は、全て投資と考えるべきではないでしょうか。

我々の設備投資も、利益を生むための投資に他なりません。だからこそ設備に対する考えも消耗品的認識ではなく、より高い価値を得るための独自技術や仕組み作りのための投資という考えに変わって行くのは当然のことなのです。

松石社長 昔、印刷会社の営業はクライアントを教育してリードしていました。それがいつの日か引きずられ土下座してでも注文を貰うような営業マンが日本中を闊歩しているように思います。

吉田 その点、アグフアさんの営業さんは違いますね。判っていただけないなら買って貰わなくても結構です。そんな風に言っていらっしゃるでしょ。(笑)

判っていただけないのは未だ機が熟していない。判っていただけるまで暫く様子を見て、無理強いしてお客様に押し付けるようなことは慎む。人事を尽くして天命を待つ、そんな辛抱強い営業活動をしておられます。正に営業の原点とも言えます。