新人デザイナー、シンコが先輩とともに一人前のデザイナーを目指す物語。
2人の掛け合いを見ながら、デザインの知識を紹介していきます。
みなさんもシンコと一緒に、新人デザイナーになってデザインを知ろう!
先輩
新人デザイナーシンコの先輩。
前回までの荒ぶりがウソのように、今回は落ち着いている。
学生時代はしつこい性格だったらしい。
シンコ
先輩のもとでデザインを勉強中の新人。
最近、少しずつデザインの仕事を任されてきている。
シンコ! 今回は書体についての話をしようと思うが準備はOKかなー?
フォ、フォントに~!?
やめろー! デザインを勉強し始めた学生がフォントに対してついつい使ってしまうダジャレ第1位(※先輩調べ)を使うのはやめろー!
テッヘヘーッ!
つい使いたくなっちゃいますよねー!
かくいうこの先輩も、昔はフォントって言葉に過剰に反応してたけどな!
言いすぎて当時の彼女にフラれるくらいさ! はっはー!
どんだけ使ってたんですか・・・?
書体とフォント
さてシンコ!
書体とフォントの違いってわかるかい?
え!? 同じ意味でしょ?
書体を英語でフォントっていうだけなんじゃないですか?
正解なようで不正解だ!
混同されることが多いが、厳密に言うと違うぞ!
フォ、フォントに~!?
(くっ・・・! このダジャレ、ついつい使ってしまうダジャレ第1位だから大変なんだよなぁ・・・! しかし負けないぞ!)
「書体」は大きく分けると、明朝体やゴシック体など共通したデザイン方式やコンセプトで作られた文字の集まりのことを指すんだ!
そして「フォント」というものは元々は欧文活字の世界で使われていた言葉なんだ!
歴史は古く、15世紀頃にグーテンベルグが発明した活版印刷が・・・ウンヌンカンヌン・・・
ストーーーップ先輩!
歴史の説明は長そうだから手短にお願いしまっす!
え? えー!?
え、えーと活版印刷って知ってる?
えーっと、名前だけなら?
ハンコみたいなやつですよね?
一文字ずつの文字のハンコを並べて文章を作って印刷するという・・・私は見たことないですけど・・・
フォ、フォントに~!?
むぐぐー!!
(耐えろ自分・・・!イラっとしたら負けだ・・・!)
書体は文字のデザインそのものに対して使い、フォントは文字のセットに対して使うってことですね!
そういうことだ!
でもフォントに書体の意味を含めて使う人もいるし、活字がデータに変わったように、時代の流れで言葉の意味は日々変わっていくなぁ~
和文フォントと欧文フォント
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数日後
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せせせ、先輩~!!
ネコ型ロボットに頼るような声を出してどうしたシンコ!
私がやってる誌面を作る仕事にですよ!?
文章中に使われる英数字には「欧文フォント」にしてくださいってあるんですよぉ~~!!
・・・それがどうかしたの?
だってですよ!?
1つの文章の中に2種類のフォントがあるってことじゃないですか! メンドウくさいじゃないですかー!
全部和文のフォントでもよくないですか!?
ほほうなるほど!
これは和文と欧文の違いを説明せねばなるまい!
よーしその仕事は中断だ! 席につくんだシンコ!!
お願いしまーす!!(スチャッ)
まず和文フォントとはひらがなや漢字に対応した日本語用のフォントのことであーる!
次に欧文フォントとは! アルファベットや数字、それと一部の記号のみに対応しているのが欧文フォントというものだ!
先輩! 和文フォントにもアルファベットがあると思うんですけど! それだけでいいんじゃないですか?
正直言って、先輩もそれでいいと思う!
特に指定がなければ1つのフォントだけでいいと思う!
だが、シンコのやっている仕事のクライアントさんはより美しく作って欲しいというこだわりがあるみたいだな!
どっ、どうしたんだシンコ!? 少女漫画風になって!?
と、とりあえず和文と欧文は文字の構造が基本的に違う!
上の図を見ると和文の1文字は仮想ボディという正方形の枠の中に収まっていて、ヨコ組みの文章にもタテ組みの文章にもできるというのが特徴だな!
そして欧文というものはベースラインを基準として、文字を構成する要素に応じた他のラインで、文字の形が作られている。
幅は文字によって変わるのが特徴だ!
こうして見ると、和文と欧文って全然違いますね・・・
ややこしいなぁ・・・
ではここでイジワルな問題です!
この書体はなんという書体でしょーかっ?
い、イジワルな?! えぇ~~~?
明朝体とゴシック体にしか見えませんけど・・・?
ブッブー! 半分不正解でーす!
答えは漢字は明朝体とゴシック体、AとBの英字はセリフとサンセリフという書体に分けられるのでーす!
サン、セリ・・・フ?
明朝体とゴシック体というのは和文フォントに対して使用する用語で、欧文フォントでは明朝体に似た書体を「セリフ」といい、ゴシック体に似た書体を「サンセリフ」と言うんだ!
フォ、フォントに~!? 初めて知りました・・・
セリフっていうのは文字の飾りのこと!
それがそのまま書体の呼び名になったんだ!
そしてサンセリフの「サン」はフランス語で「無い」という意味。
サン+セリフは「無い+文字の飾り」、つまりゴシック体に相当する意味になる!
これは勉強しないとわからない・・・このシンコちゃんをおちょくった罪は重いですよ先輩・・・?
怖い台詞(セリフ)を言うなよ・・・
でも、このおかげでアルファベットを並べたとき、欧文フォントは和文フォントよりバランスが良く見えるようになるぞ!
※以下のの和文フォントの英数字はいわゆる全角の文字での話です。
はー! 同じ文字でも和文フォントと欧文フォントでは文字の形や間隔が違うんですね!
英数字は欧文フォントのほうが綺麗に並んでいます!
ただし、同じ大きさの設定のフォントでも、欧文フォントは和文フォントより小さく見えたりするので組み合わせて使う時は注意が必要だ!
意図的に欧文フォントを大きくするなどしてバランスを取ってあげるとより美しい字面になるぞ!
こういうのってタイトル文字や見出し文字に使うと見栄えが違ってきそうですね!
こういった細かい作業がデザインの仕上がりの美しさに結びついていくんでしょうな~
うむ! 美は細部に宿るということだな!
だが無理はせず、まず自分のできる範囲でやってみてほしい! でないとどこまでも突き詰めて終わらなくなっちゃうからな!
ではこれにて前半は終了だ!
後編は「タイポグラフィ」についてレクチャーしようと思う!
デザインの勉強に役立つ書籍
デザインのイロハ 連載一覧
- 第1回|デザインとは?─アートとの違いは?/何のためにデザインはあるのか
- 第2回|「レイアウトの4つの基本原則─近接・整列・反復・対比
- 第3回|レイアウトにおける視線の誘導─Z型・N型・F型
- 第4回|記号と形のもつイメージ─マーク・サイン・ピクトグラム・アイコンの違い
- 第5回|色についての知識(前編)─有彩色・無彩色/暖色・寒色・中性色/色のイメージ
- 第6回|色についての知識(後編)─配色の基礎/配色のバランス
- 第7回|文字の話(前編)─書体とフォントの違い/和文フォントと欧文フォントの違い
- 第8回|文字の話(後編)─タイポグラフィ/書体のイメージ/文字間
- 第9回|写真の扱い方─写真の補正/写真を選ぶ/写真を活かす
- 第10回|デザイン制作のコツ(前編)
- 第11回|デザイン制作のコツ(後編)