複数回に分けて弊社が発行している書籍『非常識が企業を進化させる - 全体最適は社会も変える -』の内容をメールマガジンでお届けしております。
経営者・営業担当向けの内容になっております。
書籍『非常識が企業を進化させる - 全体最適は社会も変える -』については以下のページをご覧下さい。
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2011年10月13日にハイデル・フォーラム21プリネクト研究会主催により、新潟県五泉市に本社を構える株式会社吉田印刷所にて「未来環境型IT工場見学会」が開催されました。
この原稿は、当日行われた吉田和久(吉田印刷所代表取締役社長)と本田雄也(ハイデルベルグ・ジャパンプロダクションマネジメント部部長)によるパネルディスカッションを文章化したものです。話の流れを分かりやすくするため、順序の入れ替えや言い換えなどの修正を行っていることを予めご了承ください。
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(前回の話を読みたい場合はこちらから→ http://bit.ly/Mev2y8 )
●自社だけではない、お客様も含めた全体最適化
◆本田 ──────────
この業界では1990年過ぎから「DTP」という言葉が「デジタル化」と呼ばれて進んできましたが、それはもしかしたら、IT化を単なるデジタル化としか捉えていなかったのかもしれませんね。
社長がおっしゃったように、IT化というのは、単なるデータがデジタルになったということではなくて、物事の進め方においていかにうまく活用するかということだと思うのです。どちらかと言うと印刷業界は受身で、データがデジタルだから対応していたという流れでしたが、工程の流れ、物事の流れの中に落とし込んでいくべきだというお考えで宜しいでしょうか。
◆吉田 ──────────
はい、それが全体最適ですよね。
◆本田 ──────────
早速、全体最適という言葉が出てきました。
これも言葉としては数年前からよく言われています。
悪く言うと、何かあったらなんでもすぐ「全体最適」の一言で済ませてしまう場合があるんですが、実は非常に奥が深く、捉え方も色々あって、本質を掴んでおかないと錦の御旗になってしまう、掛け声だけで終わってしまうところがあるんです。
一言、全体最適に関する社長のお考えを教えていただけますか。
◆吉田 ──────────
これから見学していただく印刷工場はCTPが印刷機械のすぐ横に置いてあります。
以前はプリプレス工程にあった設備を印刷工程に持ってきました。
その際に人も一緒に付いてきてもらい、面付けおよび出力までの作業は全て印刷の現場で行っています。
これは単に印刷工程とプリプレス工程の一部分を統合したという話ではなく、完全一致の融合を目指した結果、現状の形になりました。
CTPのオペレーターは時間がある時は印刷工程のサポートをし、尚且つ、製本工程のサポートもします。
逆に印刷のオペレーターはCTPの出力で手が足りないという時はあたりまえのように刷版を出力します。
全体最適にとって、この融合が重要な意味を持つのではないかと思っています。
◆本田 ──────────
社長が日頃お話になる「全体最適」の全体の範囲についてお聞かせください。
◆吉田 ──────────
全体最適は、今お話ししたような自社の最適だけに留めていてはだめだと考えています。
言い方が少し上から目線のようになりますが、私たち印刷業界がこれまで行ってきたことがお客様にとって本当に諒とすることだったのか、今一度考えなくてはいけません。
「こういう印刷物の提供の仕方が、お客様や社会をも含めた全体最適に結び付くことなのか」を再考し、これまでの印刷物提供の仕組みそのものを変化させるべきだと考えています。
◆本田 ──────────
吉田印刷所様が考える「全体」というのは自社だけでなく、発注されるお客様も対象にした社会全体であるということですね。
後程、吉田印刷所がお客様に展開されている様々な提案を聞いていただければ、今お話に出ました全体の範囲が「正にそうだ」とお分かりいただけると思います。
ITについてお話いただきましたが、機能やサーバーといった細かいところではなく、本質は、「どのように使うか」という点にあるというお話でした。
ITを用いて工程の流れを自動化することにより、社内のエネルギーをいかに省力していくかということですね。
エネルギーという視点で捉えますと、例えば「環境問題、これはやらないとだめだ!」と必死になった場合、大変なエネルギーがかかってしまいます。
エネルギーがかかれば当然経済性が麻痺し、環境問題への取り組みに対しネガティブな発想になっていくパターンが多いように実感しております。
ネガティブな発想から視点を変えて、例えば吉田印刷所様がされているように、普段から「あたりまえ」に無駄の削減に取り組む形はいかがでしょうか。
継続していくことで環境により良い影響を与え、その結果、経済的にも良い方向に影響する。
初めに吉田社長から、エコロジーとエコノミーはどれが先という性質のものではないというお話がありました。
同じように、エネルギーも、エコロジーやエコノミーと切っても切れない関係にあり、このバランスを一つ間違えたために本質を見失ってしまうこともあります。
つまり、エコロジー・エコノミー・エネルギー、この三つのバランスが重要ということです。
これらを、印刷業界が今必要とされている「三つのE」として常に意識していただきたいと思います。
◆吉田 ──────────
エコロジー、エコノミー、そしてエネルギーという三つのE。
それにプラス、私どもはエボリューションカンパニーを目指し常に進化し続ける会社でありたいと願っております。
エボリューションのEを入れて四つのEでお考えになると、先の見える変化には進化が必要なんだということが、更にお分かりいただけるのではないかと思います。
進化とは、未来を予測する能力であり、不可能を可能にする希望の光だと思っています。
これとは逆に、進化できない企業の未来には、これまでの仕組みが先細りする衰退の道しか残されていないのではないでしょうか。
私の考える「進化する」とは、これまでとまったく違うことをやれという話ではありません。
今までやってこなかったこと、やれないと思っていたことを本気になってやれという話です。
この件に関してはまた後程、本田さんとお話したいと思っています。
(次回に続く)
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