解説
PDF/X-4とは、印刷用途向けの規格である「PDF/X」のひとつです。ISO 15930にて規定されています。
PDFのバージョンは、PDF/X-4:2008(ISO 15930-7:2008)ではPDF 1.6がベースとなっています。
実際のアプリケーションで見てみると、Adobe Creative Suite CS3~CS5のPDF保存設定プリセットではPDF 1.4がベースとなっており、CS5.5からPDF/X-4:2010としてPDF 1.6がベースとなっています。
主な仕様(決まり)について
主な仕様は以下の通りです(全てではありません)。
- カラーはCMYK・グレースケール・特色・CalRGB(Calibrated RGB)・CIELAB・ICCプロファイル付きのカラーが使用できます
- 全てのフォントは埋め込まれてなければいけません。
- Open Type Fontの埋め込みが可能です。
- OPIは禁止されています。全ての画像はファイルに埋め込まれていなければいけません。
- マルチメディア情報(音楽や映像など)やスクリプトは含めることができません
- 断裁の位置(トリムボックス)と断ち落としの位置(ブリードボックス)の指定が必要です
- トランスファー関数は使用できません
- トラップの有り無しの指定が必要です。
- JPEG2000圧縮を使用できます。(PDF/X-4:2010)
- LZW圧縮の使用は禁止されています。
- 暗号化などのセキュリティ情報は禁止されています。
- 透明情報を含めることを許可しています。
- レイヤー情報を含めることを許可しています。(PDF/X-4:2010)
透明情報を含めることができるので、透明情報を含むオブジェクト(※1)をそのままPDFに保存することができるため、シンプルなデータ構造のPDFとなる傾向があります(※2)。
ただし、PDF/X-4のデータをより正確に効率よく演算(RIP)するためには、PDFをダイレクトに演算できるエンジンである「APPE」を搭載したRIPを使用することが求められています。
※1:不透明度を変更したり、透明の種類を乗算などに変更したりして、透けて見えているオブジェクト。また、Photoshopで背景が透明のオブジェクト。
※2:オブジェクトの分割・意図しない画像化・文字のアウトライン化などがPDF変換の際に発生しない
AdobeのソフトウェアでのPDF/X-4のリビジョンの違いについて
Adobeのソフトウェアを使用していると、PDF/X-4にPDF/X-4:2007・PDF/X-4:2008・PDF/X-4:2010といった色々なバリエーションがあることがわかります。
PDF/X-4:2007
Illustrator CS3やInDesign CS3で表示される「PDF/X-4:2007」はまだISO 15930の草稿段階(ドラフト)だったため、ISO 15930-7:2008の「PDF/X-4:2008」と表現が異なっています。
実際の運用上は問題はありません。
So where does PDF/X-4 come in? It's a draft standard which is about to be approved as an ISO PDF/X standard. I
PDF/X-4 PDF Preset in InDesign CS3 | InDesignSecrets
PDF/X-4(2007) Acrobat 8 では、Acrobat 出荷時点での ISO 仕様のドラフト状態を反映するので、このプリセットのことを PDF/X-4 DRAFT と呼びます。このプリセットは PDF 1.4 をベースとし、透明効果をサポートします。PDF/X-4 のカラーマネジメント仕様と International Color Consortium(ICC)色仕様は PDF/X-3 と同じです。PDF/X-4 準拠ファイルは、Creative Suite 3 アプリケーション(Illustrator、InDesign、Photoshop)から直接作成できます。Acrobat 8 では、プリフライト機能を使用して PDF を PDF/X-4 DRAFT に変換します。PDF/X-4 に準拠して作成された PDF ファイルは、Acrobat 7.0 および Adobe Reader 7.0 以降で開くことができます。
Adobe Acrobat 3D Version 8
PDF/X-4:2010
PDF/X-4:2008とPDF/X-4:2010の違いに付いてはPDFのバージョンだけでなく、画像圧縮方式の追加、そしてレイヤー情報の追加となっています。
なお、PDF 1.4はAcrobat 5.0形式、PDF 1.6はAcrobat 7.0形式です。
Adobeのサポートページでは以下の記載があります。
PDF の機能強化PDF/X-4:2010 のサポートが追加されました。PDF/X-4:2010 は以前の PDF/X-4:2008 と同じですが、PDF のレイヤーの指定に関する制限が緩和されました。この変更により、InDesign CS5.5 で書き出した PDF にレイヤーを作成できるようになり、PDF 1.6 の互換性が確保されました。レイヤーのサポートとは別に、PDF 1.6 ではカラー画像とグレースケール画像のオプションとして JPEG2000 圧縮が使用できるようになりました。
以前に PDF/X-4:2008 を使用してプリンターに送信したファイルを認定していた場合、ワークフローに変更が生じることはありません。
注意: デフォルトの [PDF/X-4:2008] Adobe PDF プリセットは保持されますが、PDF/X-4:2010 を使用するように更新されるため、既存のワークフローが壊れることはありません。
PDF/X-4:2010について(InDesign CS5.5)
PDF/X-4:2010のプリフライトについて
InDesign CS5.5・InDesign CS6などで書き出したPDF/X-4:2010準拠のPDFファイルをAcrobat 9でプリフライトチェックを行うとエラー表示が出る場合があります。これはAcrobat 9に標準搭載されているPDF/X-4のプリフライトがPDF/X-4:2008(Adobe CS4・CS5のPDF/X-4)準拠のチェックを行っているためです。
Acrobat 9 ProのプリフライトはInDesign CS5から書き出したPDF/X-4:2008標準のPDFファイルを解析することができるプロファイルが搭載されています。このプロファイルはInDesign CS5.5から書き出したPDF/X-4:2010標準のレイヤーを含むPDFファイルに対してエラーとなります。オプショナルコンテンツ設定辞書にBaseStateエントリがない
オプショナルコンテンツ設定辞書に空きでないOrderエントリがある」
PDF/X-4:2010とAcrobat Proのプリフライトについて(InDesign CS5.5)