中綴じと無線綴じの違いは? メリット・デメリットを比較してみました
カタログ印刷や冊子印刷では、ポスターやチラシと違って「綴じ」という製本加工でページ同士をまとめています。この綴じの加工は色々あり、よく使われるものだけでも以下のものがあります。
- 中綴じ
- 無線綴じ
- PUR製本
- 平綴じ
- 糸かがり綴じ
※PUR製本は無線綴じの一種ですが、PURと指定される場合が多いので分けました
このほかにもさまざまな特徴を持った綴じがあります。
綴じの製本加工は、ページをまとめるという機能は同じですが、その手法によって、コストや納期が変わってきたり、仕上がりなども変わってきたりするので、印刷物の目的に合っている綴じ加工を選択する必要があります。
そうは言っても、このさまざまな綴じの特徴を理解して、印刷物に合った適切な綴じを選択するというのも、難しいと感じられるかもしれません。
今回は、さまざまな綴じの中でもカタログ印刷や冊子の印刷で最もよく使われ、よく目にすることの多い「中綴じ」と「無線綴じ」について、違いやメリット・デメリットを解説します。まずはこの2つを理解することで、綴じ加工を理解するきっかけにしてみてください。
中綴じのメリット・デメリットについて
中綴じとは、一般的には見開きのページの中央に針金で2箇所を綴じる製本方式です。ページ数の少ないカタログ・冊子でよく使われる製本方式です。週刊誌や情報誌でよく見られます。
次の写真のように、ステープラー(いわゆるホチキス)で綴じたような体裁になっているものが中綴じ製本された印刷物になります。
それではメリット・デメリットをチェックしていきます。ここでは中綴じと無線綴じを比べてメリット・デメリットを解説します。
○ 少ないページ数でも製本できる
中綴じは基本的に4ページより大きい4の倍数のページ数であれば製本することができます。つまり8ページ、12ページ、16ページ、20ページ、24ページ、28ページ、32ページ…とページ数は少ないページから柔軟に対応できます。○ ページの開きが良い
中綴じは4ページ単位で折ったものを綴じるタイプの製本方式なので、見開き部分の開きがほかの製本方式に比べると良い傾向にあります。
真ん中のページ(例えば32ページであれば16・17ページ)は一続きの紙ですので、見開きの開きは完全なものになります。ほかのページではページ数や用紙の厚さ、製本の精度により変わりますが、概ねセンター部分ギリギリまで開くことができます。
このためセンター部分まで写真があるようなデザインでも大きく破綻することなく仕上がる点が中綴じの良い点です。
○ コストが比較的安い
中綴じは無線綴じなどに比べて、シンプルな製本方式のため、綴じるための資材や、製本の準備ができるまでの時間、製本スピードなどの点から、結果としてコストが比較的安めの製本方式になります。○ 納期が短め
コストの項目でも解説しましたが、製本に必要な時間が短めなので納期が短めです。ほかの製本糊を使う製本方式では、製本糊が固まって安定するまでに時間が必要な場合もありますが、中綴じは、針金を使用するのでそうした待ち時間がなく、納期が短めとなります。
△ 中綴じは4ページ単位でしか製本できない
中綴じは4ページ単位でしか製本できません。既に8ページ分のデザインができあがっていて、新しく情報を追加したい場合に1ページ(裏面を含めると2ページになります)を追加したいと思っても、それはできません。12ページにしなければ中綴じができません。
それは前の写真にもあるように、見開いた2ページ(裏面を含めると4ページ)の真ん中を折って、そこを針金で綴じる方式なので、4ページ毎の追加になってしまうためです。
△ ページが多いと小口部分のズレ(=ページ幅のズレ)が大きくなる
中綴じは折った紙をすべて重ねて綴じるので、一番内側(真ん中)のページに近づくにつれ、仕上がりサイズから飛び出してしまいます。綴じた状態で仕上がりサイズになるように、この飛び出した部分を「仕上げ断裁」をして見栄えを良くするのですが、その結果、内側のページに近づくにつれ、ページの幅が短くなってしまいます。
次の写真は64ページの中綴じ冊子の一番内側のページ(P.31)と一番外側のページ(P.61)を並べた物です(送り込み※の処理をまったくしていない場合の写真)。デザインデータ上はノンブル(ページ番号)の位置は「まったく同じ位置」に配置されているにもかかわらず、ノンブルの位置が紙の端から4mmと7mmと3mmも違っています。ページが多くなると、このズレもさらに大きくなります。
※面付け・製版という工程において、ページの情報を内側に移動させる送り込みという処理を施して、ズレを軽減する場合があります。この送り込みの処理はページ内の絵柄やレイアウトによってはできない場合もあります。
△ 100ページ以上では製本が対応不可能もしくは困難
ページ数が100ページ以上の冊子は針金が通りづらくなり、製本の仕上がり精度を保つのも難しくなります。また表紙・本文で使用している紙の種類や厚さによっては100ページ以下でも中綴じが困難な場合もあります。
△ 背のデザインができないので本棚に冊子を並べたときに見つけづらい
中綴じは無線綴じと異なり、背の部分は紙を折った状態になっているので、背のデザインができません。このため、連続して発行している印刷物や季節毎に発行している印刷物などを本棚に並べて整理したときに、いつ発行した印刷物かの見分けが難しく、すぐに取り出しづらいことがあります。また、並んだときの見た目も背の部分の針金などが見えるだけなので、見栄えはあまり良くありません。
△ 無線綴じより高級感が劣る
中綴じは背が付けらませんが、無線綴じは背を付けて背のデザインをすることができます。背の部分は表紙が直角に折られ、しっかりとした仕上がりに見えます。また、中綴じはその綴じ方の仕組み上、ページ数が多くなると冊子が膨れてしまいますが、無線綴じの場合、比較的フラットな長方形になります。
こうした違いから無線綴じより中綴じは高級感が劣ります。
△ 食品系・教育系・介護系では中綴じが使用できない場合がある
食品メーカー・病院・製薬会社・飲食店で、現場に針金などの金属が混入するのを防ぐため(異物混入防止)に、また、保育園・幼稚園・小学校・介護施設・学習教材メーカーで、小さなお子様やシニアが針金の金属でケガをするのを防ぐために、中綴じ製本や平綴じなどの針金を使う製本を禁止しているところがあります。
そのほか、企業やNPO団体で、環境に配慮し、リサイクルをしやすい印刷物にするために、中綴じを敬遠しているところがあります。(無線綴じなどは基本的に紙だけなので分別しやすく、シュレッダーに掛けやすいため)
画像:チョコレートとクッキー/教室で勉強する子どもたち6(写真AC)
無線綴じのメリット・デメリットについて
無線綴じとは、いくつかのページを折った折丁を重ねて背の部分に糊を付けて綴じる製本方式です。ページ数の多いカタログ・冊子でよく使われる製本方式です。商品カタログや月刊誌などでよく見られます。
次の写真のように、背を糊で綴じた印刷物になります。
それではメリット・デメリットをチェックしていきます。中綴じと同じように、中綴じと無線綴じを比べてメリット・デメリットを解説します。
○ 100ページ以上でも製本ができる
無線綴じは背に糊が付けばページ数が100ページ以上でも製本することができます。
吉田印刷所の実績では1300ページ超えのカタログを無線綴じで行ったことがあります。
○ ページ数の制限が緩い
中綴じは4ページ単位で製本し、無線綴じは基本的に16ページ単位などで製本されますが、16ページ単位から外れた2ページ(=ペラ)または4ページをほかの折丁や表紙に挟み込んだり、糊付けを工夫したりすることで無線綴じができます。つまり、表紙4ページ+34ページといった構成でも無線綴じは可能です。
○ 本棚に冊子を並べたときに見つけやすい
無線綴じは中綴じと異なり、背の部分に厚み(背幅)があります。こちらを背文字などでデザインすることで、本棚に並べたときに目的の印刷物が見つけやすくなるという特長があります。定期的に発行している印刷物などでは背のデザインを行うことで整理しやすくなります。
※ページ数が少ない(=背幅がほとんどない)場合は、デザインができません
画像:Books Bookcase Organization(Pixabay)
○ 中綴じより高級感がある
中綴じは背のデザインができませんが、無線綴じは背のデザインをすることができます。また、無線綴じでは背の部分は表紙が直角に折られ、比較的フラットな長方形になるので、しっかりとした仕上がりに見えます。中綴じはその綴じ方の仕組み上、ページ数が多くなると冊子が膨れてしまいます。
こうした違いから中綴じより無線綴じは高級感を感じる綴じとなります。
○ ページが多くても中綴じより小口部分のズレが少ない
無線綴じは中綴じとは異なり、折丁を重ねていき、背の部分に糊を付ける綴じ方です。
このため、一定のページ数のかたまりのものが繰り返し重なっている状態ですので、背の反対側の小口が最初のページと中央のページで大きなズレになることはありません。中綴じよりズレは抑えられた状態になります。
△ 背の幅が小さいと綴じが不安定になる
本文のページ数が少なかったり、本文の紙の厚さが薄かったりすると、背の幅が小さくなります。あまりに背の幅が小さいと、背に付けられる糊の量が少なくなるため、綴じが不安定になり、ページが取れやすくなる場合があります。
△ ページの開きが悪いのでノドの部分が見えない
中綴じよりは開きが悪い(=開口性が悪い)ので、ノドの部分が見えない、もしくは見えづらいため、見開きの画像をそのまま配置してしまうと見えない部分が出てきてしまいます。無線綴じで無開きの画像を使う場合は、画像データの配置もしくは面付けで調整が必要です。
同様に文章もノドの周辺は読みづらくなりますので、文字をどこまで入れるかのデザインを考えておく必要があります。
画像:Mom Caucasian Child(Pixabay)
△ 中綴じよりコストが高め
無線綴じは製本のための準備時間や資材の関係で、一般的には中綴じよりコストが高くなる傾向にあります。
△ 中綴じより納期が長め
コストの項目と同じですが、製本のための準備時間や資材の関係で、一般的には中綴じより納期が長めになる傾向にあります。
△ 保存状態によっては糊の部分が壊れやすくなる
無線綴じの綴じ部分は糊なので、高温になると、糊が軟らかくなってきて綴じが崩れてしまうことがあります。
無線綴じで一般的に使用されるEVA系のホットメルトが軟らかくなる温度は50~65℃程度と言われています。つまり密閉されて温度管理のされていない倉庫の中や屋外でアスファルト舗装された地表面に近いところに印刷物を置いてあると、綴じが崩れてしまい、ページが抜け落ちてしまう現象が発生する場合があります。(この問題はPUR製本という手法を使うことで解決する場合があります)
また、高温下で保管されていなくても、年数が経つと糊の部分が壊れる現象が発生することもあります。
まとめ
中綴じ・無線綴じはそれぞれメリット・デメリットがあります。
中綴じ
メリット | デメリット |
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無線綴じ
メリット | デメリット |
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単純にコスト面だけを見てしまったり、見栄えだけで製本方式を決めてしまうと、ページの構成が変わってしまったり、内容の追加で大幅な追加作業が発生したりと、ほかの問題が発生してしまいます。
今回の解説を参考に、カタログ・冊子の印刷の製本方式が本当に合っているのかを考えてみてはいかがでしょうか。
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